GITANESで後味を消す必要がない。
それとは無関係に・・・。
それほど金持ちではない家庭で生まれ育って
逆に言うとそれほど貧乏ではなかったはずだが
母親はいろいろ工夫していたと思われる節がある。
まずこどもに、少なくとも私には
「肉の序列」について洗脳することに成功した。
「肉というのは最上位に鶏肉がある。
その次が豚でその下が牛である。」という序列である。
この洗脳が成功したこともあって、私の中では
未だに鶏肉のポジションはかなり高い。
もちろん、今では牛がそんなに下だとも思っていないが。
鶏もも肉を焼いたのなんてこの上なくご馳走だった。
その次はとんかつ。これのランキングも相当高かった。
ということは食卓にとんかつが登場する頻度はそれほど
高くなかったはずだ。
自分でアルバイトなどをして自由に使えるカネを
獲得するようになり、外食も自分の力で自由に選べる
ようになってから気づいたのだが、この世の中にはなんと
とんかつ屋が多いことか!
あんなに上位ランキングの食べ物なのにこんなにありふれていて
いいのだろうか!という思いだった。もちろんその年代の
頃には母親の洗脳も解けていた筈なのだが、それでも
なんとなくのランキングは大きく変動していなかった。
サラリーマンがひるめしにとんかつを選び、さっと食って
さっと出ていくアイテムなのだとわかったとき
「ああ、とんかつというのは自由なアイテムなのだ」と理解した。
ファストフードのハンバーガーを満腹になるまで食べるより
とんかつ屋でとんかつを食べる方が「充足」の近道だと
分かった。
そうなっても別にとんかつに対する「憧憬」はそれほど損なわれる
こともなく現在に至っている。
しかし、とんかつだったらどこで食べても美味かったという
年代は過ぎてしまって、「こりゃダメだ」という店にも
気付くようになってしまったのは幸せなのか不幸なのか
判然としない。
行動範囲内にあるとんかつ屋は、
〇M
ここは美味い。だから混んでいる。
そうなると提供時間は結構遅くなるが、それを待つ価値が
あることがわかっているからおとなしく待つ。
ヘレもロースも棒も美味い。ついでにメンチカツも。
しかし最近、ランチの営業時間が短縮されてしまい
これはなかなかの悲劇である。
〇Y
商業施設にある。
まあ美味いんだろう。でもそれは「とんかつだから美味い」
のであって、「美味いとんかつ」ではないような気もする。
最近のコメの高騰のせいなのか、お櫃で提供されていたごはん
が、初めから飯椀で提供されるスタイルに変更された。
しかしお代わりは自由。
〇YH
これも商業施設にある。
ビジュアルは豪華、メニューも多い。
なぜか食後の満足感がない。
とんかつにかけるソースをアレンジ(柑橘系のフルーツ使用)
したものがあるが、あれはとんでもない。要らんことだ。
とんかつに対する冒涜である。食べ物で遊ぶな。
〇MM
老舗。ずっと昔行ったことがある。美味い。
でもすごく混んでいる。だから足が向かない。
そういえばここのにーちゃんは、私が昔勤務していた
レンタルビデオ屋によく来てくれていた。
ニコニコしたにーちゃんだった。まだいるのだろうか。
〇A
便利な街中の、ちょっと不便な場所にある。
うまいのだが店内はせまく雑然としている。
釣銭切れを心配したからだろうが、店主と思しき男が
「細かいのないか?」と頻りに客に訊いていた。
それしか印象に残らず。
〇S
勤め先から最も近い。
商業施設になる。
高い。
どうしてなのかわからないが、なんかウザい。
〇U
知り合いがやっている店。
これも歩いて行ける距離にある。
なぜなんだろう、知り合いの店となると
つい行かなくなる。これは自分が
「どんな店でも常連にはなりたくない」と思って
いるからだろう。
美味い。
〇F
ここも歩いて行ける。
店主は愛想もよくとんかつにはボリュームもあり
美味い。
ああそれなのに、あまり行かない。理由はわからない。
〇G
店構えがただモノではなく傷んでいて、しかし店内は
意外にもキレイかな、と思いきや
中はもっと傷んでいる店。
痛み具合が凄すぎて、味どころの騒ぎではない。
一回しか行かなかった。
と、おもいつくだけでもこれだけあるが、
ネットのマップで見たらもっとたくさんのとんかつ屋が
周囲にあるようだ。
やっぱりとんかつは、実はありふれた料理であって、
しかし美味いことには変わりはない。